家族旅行では、なぜ「時間が足りない」と感じるのか
家族旅行中、「早くして」「もう行くよ」と焦る瞬間は誰にでもあります。
予定が少し遅れただけでも、なんとなくイライラしてしまう。
でも、それは本当に「時間が足りない」からでしょうか?
パーポス家の経験では、実はそうではありません。
時間が足りないのではなく、期待が多すぎるのです。
「予定通りに進まない=失敗」と思い込んでしまうと、
旅の目的が「楽しむこと」から「管理すること」にすり替わってしまいます。
パーポス家の実例:時間を許せなかった朝
ある家族旅行の出発日。
朝になっても中学3年の長男が起きてこず、しかも「行かない」と言い出しました。
タクシーを待たせていた私は焦り、妻と次男を先に乗せ、
自分は部屋に戻って長男を半ば無理やり起こしました。
ようやく乗り込んだタクシーの中は、重い空気。
私は長男の顔も見たくないほど、怒りと焦りでいっぱいでした。
守りたかったのは「出発の予定」。
家族全員の努力が、たった一人のせいで台無しになると思ったのです。
でもあとで知ったのは、長男は「旅行が楽しみで眠れなかった」ということ。
怠けていたわけでも、反抗していたわけでもなかったのです。
ただ、楽しみすぎて眠れなかった——それだけでした。
あの時、私は時間を守ることに必死で、
「一緒に過ごす時間」を守ることを忘れていました。
予定どおりに出発できたこと自体は良かった。
けれど、車内の雰囲気は最悪。
時間を守っても、心を置き去りにしていたのです。
時間を「許せる」と、旅が変わる
あの出来事以来、私は「時間を支配しよう」とする気持ちを少し手放しました。
すると、旅の中で起きる小さなズレを「失敗」と思わなくなったのです。
例えば、目的地の到着が遅れて予定を変更したときも、
「まあいいか」と言えるようになりました。
すると不思議なことに、家族の空気も柔らかくなり、
時間を気にして喧嘩することが減りました。
時間を許すとは、「ズレ」を受け入れること。
そして「今この瞬間も旅の一部だ」と思えることです。
家族旅行で起きる「時間にまつわる3つの誤解」
① 予定通り=成功ではない
予定通りに進むことが目的ではなく、
その時間をどう過ごしたかが旅の価値になります。
遅れたことで見つけた風景や、予定変更で入ったカフェが、
後から一番の思い出になることも多いのです。
② 待ち時間=無駄ではない
空港の待ち時間、渋滞の時間、列に並ぶ時間——。
イライラすることもありますが、
その間に家族と何を話すかで、旅の記憶は変わります。
焦ってスマホを見て過ごすより、
「今日のここまでどうだった?」と話してみると、
意外と笑顔が戻ってきます。
▶ 関連記事:家族が時間で喧嘩する3つの理由とその回避法
③ 自分のリズム=正しいとは限らない
家族にはそれぞれのリズムがあります。
早く動きたい人もいれば、ゆっくり準備したい人もいる。
その違いを「ズレ」ではなく「個性」として受け止めることで、
旅行中のストレスはぐっと減ります。
▶ 関連記事:家族のペースが合わないときの3つの工夫
「時間を守る」より「時間と共にいる」
家族旅行での幸福は、分単位の正確さではありません。
誰と、どんな気持ちで、同じ時間を過ごしたか。
それこそが“家族旅行の成功”だと思います。
時間を敵にしない。
時間を味方にする。
そのために必要なのは、「時間を許す心」だけなのかもしれません。


コメント